建築物の配管やダクトを保温・断熱し、陰から建物の稼働を支えているのが断熱材だ。日本では一般的にグラスウールなどの繊維系断熱材が使用されているが、欧米では優れた保温・断熱性能に加え、環境への配慮からゴム系断熱材の使用が一般的。ルクセンブルクに本社を置くArmacell(アーマセル)はゴム系断熱材で世界トップシェアの「アーマフレックス」を展開する。同社の日本法人であるArmacell Japan(社長=安村義彦氏、本社・東京都中央区八丁堀1-2-9)は、主戦場である一般空調分野に加え、産業分野でも優れた性能を訴求したい考えだ。
アーマフレックスは二トリルゴム(NBR)を基にした柔軟性発泡断熱材。形状は主にチューブ状とシート状で展開する。製品特性としては、発泡材に窒素を使用しているため超難燃性であり、煙が出にくい。また熱伝導率も低く、エネルギー損失を効果的に防止する。性能特性上、一番のポイントなるのが水に強いこと。窒素を密閉した細かなクローズドセル構造により、高い水蒸気耐性、耐結露性を有しており、水滴が付着しても配管まで染み込まない。さらに、使用可能温度帯はプラス105~マイナス50度Cと幅広い。特に低温に強みを有しており、日本ではコンビニ、スーパーのショーケース配管で普及が進み、この分野ではトップシェアを有している。
工場等においては、流体が低温の液体でも、。既にターボ冷凍機周りの断熱材としては高いシェアを有している。同社、安村義彦社長は「産業分野において、アーマフレックスが特に強みとなるのが加工がしやすい、埃が出ない、抗菌作用を有している、の3点」と強調する。
1点めは、素材が軽量で柔軟性に優れており繊維質を含まないため施工が容易。特に工場ではライン変更による配管やダクト変更で断熱材を後から施工することも多い。狭隘なスペースでの施工でも形状を加工することで難なく対応できる。
2点めは、世界的に採用されている食品、薬品工場を始め、データセンター、自動車工場、半導体や医薬品を製造するクリーンルームなどの製造現場で加工時にホコリが出ないことが強みとなる。他、断熱素材などでは、加工時に空気中にホコリや繊維が混ざる恐れがある。
3点めは抗菌保護材「Microban」内蔵の「アーマフレックス クラス0」シートタイプが優れた特性を有する。微生物が断熱材の表面に触れるとMICROBANが微生物の細胞壁に侵入し、微生物の機能・成長・再生能力を無効化し、エアクオリティを高める。
日本法人が本格的に営業活動を始めて2年弱。日本の市場環境は急速に整い始めている。今年3月には経済産業省の新市場創造型標準化制度を活用し、ゴム系発泡剤のJIS化(国内標準化)プロセスを起案した。来春のJIS取得を見込んでいる。また、施工業者向けに日本法人本社のトレーニングセンターにて、施工講習会を随時実施している。さらにアーマセル認定施工会社制度も実施しており、現在11社を認定している。これらにより施工品質の担保を図っている。
製品の仕様も日本市場向けに適応を始めている。日本の寒冷地から温暖地までの気候に対応した、素材レシピを使った商品のCOJ(シートタイプ)の発売開始をすでにしている。また空調ダクト向けには、あらかじめ工場でダクト内にアーマフレックスを施工しておくことで、現場では吊り作業のみで済む「内貼り工法」も展開。職人不足が叫ばれて久しい日本市場のニーズにマッチしている。さらに11月には日本向け製品として「アーマフォニック」からゴム製遮音シート「バリアJ57」を発売する。鉛フリーかつ薄型柔らかな素材のため加工が容易なことが特長。工場や建物の配管・ダクトや、ビルなどの水回り(シンク下部)に用いて、騒音をカットする。
なお産業分野のアーマフレックス代理店は、ウチヤマコーポレーション、ダクト鋼板商社の髙木、TKBS、プロセス系に強い旭興産など。
空調タイムス 2017年10月25日発行 掲載記事