ゴム系断熱材で世界トップシェアを誇るアーマフレックスを製造するArmacell(本社・ルクセンブルク)はこのほど、次世代エアロジェルブランケット「ArmaGel HT(アーマジェル)」をグローバルで発売した。同製品は、650度Cまでの高温条件に対応しつつ、どの温度帯においても非常に低い熱伝導率を有する断熱材。高温排気が発生する場所など、様々なプラント系アプリケーションに対応し、エネルギー効率を改善する。ロックウール等の競合する断熱材よりも4分の1~5分の1の薄さで同等の断熱性能を実現する。同社の日本法人であるArmacell Japan(社長=安村義彦氏、本社・東京都中央区八丁堀1-2-9)でも取り扱いを開始しており、産業分野のノウハウを持つ代理店を募集している。
エアロジェルとは〝世界で最も軽量〟と言われる固体材料で、体積の90%以上を空間が占める。ジェルの液体成分が空気で置き換えられた固体で、乾燥して多孔性の形状となっている。ガラスに比べて密度が1千倍低く、世界で最も密度の低い固体材料と言われる。また非常に高い強度を有しているため、NASAが彗星の一部を持ち帰る上で使用したこともあるという。特性として、非常に低い熱伝導率や疎水性、遮音性能を有しているため、これまでも注目を集めてきたが、製造工程が長いため安価にならず、量産に結びつかなかった。
だが今回のアーマジェルは、製造工程をシンプル化することで、従来72時間かかっていた製造工程を、わずか2時間に短縮した。その製造手法は、まずエアロジェル粒子を生成し、次にインジェクションラインに流したブランケットにその粒子を密に噴霧するというもの。この製造手法により、ブランケットのどこを取っても均一な断熱性能を実現でき、また様々なサイズに対応できる(現在のラインアップは厚み5、10、15、20㍉㍍)。異なったサイズを重ね合わせて、多様な厚みに対応できる。また短工期により従来品よりも安価に製造できる。
製品特性としては、高温のアプリケーションで優れた断熱性を薄く実現できることのほか、疎水性と通気性を有しているため、液体の水を弾きつつ蒸気を逃がし、乾燥した状態を長く保ち、腐食を防止できる。また、優れた遮音性能も有するため、従来必要だった遮音シートは不要。このため同等の遮音性能を持つ競合のエアロジェルに遮音システムに比べ、厚みを最大40%低減できる。さらに、軽量のため輸送が容易。柔軟で屈曲しやすく、好みの大きさに簡単に切断できるため、施工性にも優れている。加えてメンテナンス目的等で製品を簡単に取り外しでき、メンテナンス後は再度設置できるため、交換用断熱材は不要。そして国際的な規格であるASTEM(アステム)C1728標準に準拠し、タイプ3グレード1Aにおいて、熱伝導率や燃焼性等の全テストに合格しており、高い信頼性も有している。なお同製品は、Armacellと韓国企業が共同開発したもので、韓国ソウル近郊の工場で生産している。
Armacellは、アーマジェルを世界的に新しいイノベーションとして、グローバルで拡販に注力していく。既に米国、韓国、中国で受注を開始。Armacell Japanの安村義彦社長は「国内でも紹介を始めており、高い期待が寄せられている」と話しており、今後の展開が注目される。
このほか産業向けに展開している断熱材に「アーマフレックスダクト」がある。これは高い断熱性を有するアーマフレックスの表面に、アルミ箔を貼付したタイプで、シート型、チューブ型で展開する。日本では、データセンターの床下の断熱材として使用されることが多いという。
もともとゴム系断熱材のアーマフレックスは、ファイバー系断熱材と異なって表面から粉塵が飛び散ることは少ない。ただ同製品は、データセンターを始め、薬品工場などのクリーンルーム、食品や飲料の製造プロセス、また海外では病院や学校でも使用されており、少しの粉塵も見過ごせないというケースで使用されている。また内張りダクトとして用いる場合もあり、無菌・無粉塵の空調を実現できる。
最近の市場動向を見ても、データセンターに加えて、電算室が入るインテリジェントビル等の需要は多く、同製品の活躍の機会は増えている。
アーマフレックスは、ニトリルゴム(NBR)を基にした柔軟性発泡断熱材。密閉セル構造により、高い水蒸気耐性、耐結露性、そして低い熱伝導率を有している。また、NBRは、超難燃性で煙が出にくく安全。さらに、軽量で優れた柔軟性も有しているため施工が容易であり、かつ繊維質を含まないため空気質の向上にも寄与する。
空調タイムス 2018年10月31日発行 掲載記事