経済産業省は16日、柔軟弾性発泡ゴム保温材について「新市場創造型標準化制度」を活用して標準化を行うことを決定した。提案したのはニトリルゴムを基にした柔軟弾性発泡断熱材「ArmaFlex」(アーマフレックス)を販売するArmacell Japan(社長=安村義彦氏、本社・東京都中央区八丁堀1-2-9)。
新市場創造型標準化制度は、標準化(JIS化)による市場での信頼性向上や差別化を通じ、新しい技術を用いた市場創出を推進すべく平成26年7月に創設された制度。中堅・中小企業だどが保有する優れた技術や製品について、業界団体でのコンセンサス形成を経ずに、迅速な国内標準化(JIS化)や国際標準提案(ISO/IEC)提案を可能とするもの。
「アーマフレックス」は、断熱材のグローバルメーカーであるArmacell社(アーマセル社、本社・ルクセンブルグ)の製品。工業製品や建築物の断熱・保温・保冷用途として複雑な施工が可能で、ホコリや繊維を含まず水分の侵入を防ぎ、配管等の腐食が起きにくい性能が評価され、今回の決定に至った。今後は、一般財団法人日本規格協会が提案企業を含めた原案作成委員会を構成し、そこで標準化の原案作成が行われる。原案作成後、日本工業標準調査会において審議し、国内標準(JIS)となるスケジュール。
柔軟弾性発泡ゴム保温材のアーマフレックスは、国内においては冷媒配管や冷温水配管の断熱・保温材として市場を形成してきTあ。一方、海外においては空調ダクトの保温材としても一般的に使われており、エンパイア・ステート・ビル(米・ニューヨーク)など著名建築物での採用も多い。
Armacell Japanの安村義彦社長は、今回のJIS化も追い風として、空調ダクトの内貼り保温材としての採用を加速させていきたい考えだ。アーマフレックスのダクト内貼り断熱工法と従来の工法(鉄板ダクト+グラスウール保温材)とを比較して①寒冷地におけるダクト内部への雪の入り込みによる結露とそれによる金属腐食の防止②天井裏など狭い空間における従来工法での保温材表面の結露の解消とともに、作業工程での短工期とコストメリットを訴求する。従来工法ではダクトの保温工事は最終工程となり、既に建物が出来上がりつつある中での高所作業となる。一方、保温材を内貼りとすることで、工場で完成品(保温材付きダクト)を作ることができ、現場で吊りこむだけの作業で済む。実際、現場の短工期というメリットに関心が寄せられ、人手不足や工期の圧縮といった課題が顕在化する首都圏の物件においても採用事例が増えているところだ。このほかダクト内部を流れる空気音の低減や、素材に使用する活性抗菌保護財MICROBANのメリット(海外ではIAQ向上に繋がる建築部材としてオフィスや学校、病院などで評価・実績を重ねる)、さらにはシート状の断熱材で内貼りでも飛散しないなど、素材そのものでの優位性でもある。
JIS化の動きと併行して、現場で施工に携わる人向けに、東京・八丁堀の本社トレーニングセンターで無料の講習会も随時実施しており、ダクト工事業者向けには、施工現場でのトレーニングも行う。さらに施工現場をチェックするインスペクション(点検・検査)も品質を担保するものとして発注者側からの信頼も高まっている。
今年からは地方への出張講習会も開始したところ。第一弾は2月に沖縄で開催し、ダクトや保温工事業者約20社の参加者を得て盛況裡に終えた。来月は北海道での開催を予定する。
施工トレーニングで裾野が広がるにつれ、施工業者が現場で内貼り工法を推薦することもあり、設計、施工の両サイドから浸透が進む。
今回のMACSでは、ウチヤマコーポレーションと髙木(三喜工業内)のブースにてアーマフレックス製品が展示・紹介される。空調ダクトと保温、配管のいずれにもユーザーを持つこともあり、またJIS化の話題性もあることから、今展示会では多くの関係者から注目を集めそうだ。
空調タイムス 2017年3月22日発行 掲載記事