先ごろ東京ビッグサイトで開催された空調衛生設備・システムの専門展示会「スマート空調システム展」(MACS2017)ではとりわけ施工の省力化・省人化に寄与する製品・システムの展示が目立った。
鉄板ダクトの内貼り断熱工法も、そのひとつ。ダクトを製造する工場で保温材を内貼りすることで、ダクトの製造と保温工事を工場内で完結させることができる。現場ではダクトを吊り込むだけの作業となり、従来工法(鉄板ダクトに現場でグラスウール保温材を巻きつける)と比較しダクト施工の工数削減ができる。このメリットから、工期が圧縮される現場などで徐々に採用が進んでいるもの。
ゴム系発泡断熱材で世界トップシェアブランド「アーマフレックス」を展開するArmacell社(本社・ルクセンブルグ)の日本法人であるArmacell Japan(社長=安村義彦氏、本社・東京都中央区)では、国内におけるダクトの内貼り保温断熱材としての市場浸透に注力する。先般、JIS化に向けた動きも始まったところだ。そしてMACS2017ではウチヤマコーポレーションと三喜工業のブースで空調ダクトに内貼りしたアーマフレックスが紹介された。
アーマフレックスは国内ではかねてより、建材・断熱材商社のウチヤマコーポレーションが正規代理店となり、各地区のアーマフレックス代理店を販売元とし、一般ビル空調、冷温水・ブライン配管、ダクト、機器関係、店舗冷凍設備や低温倉庫などの冷媒配管など高温域から超低温までの幅広い市場に向け、そのニーズに応えるべく供給体制を構築してきた。
そして、空調ダクトの市場については、アジア、ヨーロッパ、アメリカで強い空調マーケットの強を目的に、日本向けのシートの新商品COJの拡販のため、今年から新たに、薄板鋼板商社の髙木を正規代理店とし、ダクト材やその周辺器材を扱う三喜工業のルートを通して販売する体制が整った。今回のMACSでは、髙木が三喜工業ブースの一角を使用し、アーマフレックスを紹介するという形でその「お披露目」を行った。
ダクト工事業界においても他の建設業と同様、職人の高齢化や若年入職者の減少という喫緊の課題への対応が迫られる中、首都圏では大規模ビルの建設ラッシュが本格的に動き出そうとしている。このため生産性向上は人材確保・育成とともに待ったなしの状況にある。このような中で開催された今回のMACSには、3年前の前回を約2千名上回る1万6千994名が来場。関心の高さがうかがわれた。
今回の展示会での反響についてウチヤマコーポレーションでは「ダクトの内貼りを今回初めて出店したが、省力化のニーズに対し的を射た商品として来場者から良い感触と評価を頂いた。今回の出展で認知を頂いたので、ダクト内貼りの市場を伸ばしていきたい」とコメントした。ダクトの内貼り保温材として同社は2010年から取扱いを始めており採用案件の追跡調査なども実施しつつ周知と浸透を進めてきた。
一方、鋼板商社として100年の歴史を持つ髙木は、6尺コイルの供給でダクト業界に知られるものの、副資材としてのネームバリューは皆無。今展示会では、三喜工業と同一ブースで出展することで、その販売体制を明確にアピールすることとなった。
髙木では「皆さんに興味を示してもらい、多くの質問を頂く中で、断熱材に携わる方々の『何かしらのアプローチをしていこう』との思いを感じた。我々はダクトの工場に材料を納める商社であり、ダクト工場の売上が上がる環境を常々考えてきた。アーマフレックスの内貼り断熱にはその可能性があると見込み、当社で取り扱うに至った」とし、今後はサブコンや設計事務所などへの周知活動も進めていく意向を示した。
なお、Armacell Japanでは本社が入居するビルの1階にトレーニングセンターを開設しており、希望者には無償でトレーニングを実施している。会期中も約20名が展示会見学と併せてトレーニングを受講するなど、空調ダクト業界にもそのブランドは着実に浸透してきている。
空調タイムス 2017年4月12日発行 掲載記事